台湾でスタッフを探す、というのは以前はそれほど難しい話ではなかったと思います。ただ、最近のクライアント案件をいくつか手伝う中で、「人が集まらない」という状況を続けて経験しました。
知人の飲食店では、新規店舗をオープンするタイミングで新しいスタッフを募集したそうですが、平均より少し高めの賃金に設定したにも関わらず、人が集まらなくて困っている、と話していました。イベントや展示会の短期スタッフ募集でも、以前ならすぐ集まったであろう規模の話が、今はスムーズに進みません。
今回は自分がクライアント案件を通して見てきた範囲での話ですが、台湾で人を集める難しさと、実際にどの媒体で人が動いているのか、というところを現場ベースでまとめておきたいと思います。
台湾の人材探しの主流経路——LINEグループ
まず前提として、台湾で人を探すときはLINEグループが非常によく使われている印象があります。
たとえば、いくつかのデパートの催事担当者と話していると、過去にイベントスタッフとして働いてくれた方々が入っているLINEグループを持っている、という話を耳にすることがあります。担当者ごとに大なり小なりそういう名簿的なグループを抱えているケースがあるようです。
通訳者コミュニティも同じで、「通訳をしている人」という大きなカテゴリのグループがあったり、その中でも日中通訳・中英通訳といった言語ジャンルごとに分かれたグループも存在するそうです。
こうしたLINEグループは、発起人や運営者がいて維持されているもので、基本的には知り合い経由で入るのが自然な流れです。通訳者のようなフリーランス比率の高い職種では、以下のような場面で活発に使われているようです。
- 複数人の通訳者が必要な案件の割り振り
- 自分が担当している案件で、当日どうしても都合がつかず代打を探すとき
- 業界単価や現場のリアルな情報の共有
なお、LINEグループの上限は通常500人で、上限に達すると別のグループが作られているケースもあるようです。
現場①:飲食業の人手不足
ここから先は、自分がクライアント案件で実際に見た現場ベースの話になります。
まず飲食業ですが、これは自分が直接雇っているわけではなく、あくまで台湾で飲食店を経営している知人や、業界の方から聞く範囲の話です。
台湾の飲食業界で人が集まらない、定着しない、という状況の背景には、いくつかの構造的な要因が絡んでいるようです。ひとつは、就業側の選択肢が多様化したこと。配達代行のようなギグワークや、SNSでの発信・配信を軸にした働き方など、時間の使い方に自由度がある選択肢が増えたことで、シフト拘束の重い飲食業の相対的な魅力が下がってきています。
もうひとつは、接客に伴う感情的な負担の重さです。「体力的にきついだけでなく、尊厳を感じにくい」といったニュアンスで離職する人が増えているようで、結果として、「採用そのもの」というより「集まった人が定着しない」という方向に問題が構造化しつつあります。以前は賃金を上げれば人が戻ってくる流れがあったようですが、給与を引き上げても、そもそも業種として選ばれにくくなっているため、単純な引き上げでは解決に繋がりにくい状況のようです。
「賃金を上げれば集まる」という前提が、少しずつ崩れ始めているのが今の台湾の飲食業界の空気だと感じます。
現場②:イベントスタッフの募集——大規模LINEグループより、個人SNSが効いた話
日本のブランドが台湾のデパートで期間限定イベントを行うにあたり、現地でイベントスタッフを募集する必要が出てきた案件です。
デパート側の担当者が、先ほど書いたような500人規模のスタッフ用LINEグループを持っており、そこに募集を投げる、というのが最初の一手でした。
普通に考えれば、これだけの規模のグループに投げれば、それなりの応募数が返ってくるはずです。ところが実際に来た応募は2人、しかもその2人は姉妹だったため、実質的には1件の応募という形でした。
一方で、同じ募集をクライアント側が自分のThreadsアカウントで発信したところ、そちらの方が明らかに反応が良く、必要な人数が集まってしまった、という結果になりました。
ただ、SNS経由の募集は不特定多数からの応募になるので、その分こちらでの篩い分けが必要になります。過去にイベント現場で働いた経験のある方が入っているLINEグループの方は、そこである程度のフィルタリングは効いているので、応募数さえ確保できれば安心感はあります。今回は、たまたまLINEグループの反応が悪く、SNSの方が刺さった、というだけの話かもしれません。
いずれにしても、「LINEグループの人数」というスケールの見え方と、「実際にその告知を読んで動く人数」が、想像以上に乖離することがある、という点は覚えておいて損はないと思います。既存の集約リストは、便利ではあるのですが、そこにいる人が今もアクティブに反応するとは限らない。日常的に発信しているSNS経由の方が、実際の応募には繋がりやすい場面もあるのだと実感しました。
現場③:展示会の通訳・案内スタッフ——104を試みた話
台湾で開催される大型展示会に日本企業を出展させる案件で、当日の通訳や案内スタッフを集める必要があり、台湾で最大手の求人プラットフォームである104(人力銀行)への登録を試みました。
前提として、104は基本的に統一編号を持つ台湾の法人・行號でないと利用できない設計で、外国企業や個人がそのまま使うことはできません(家庭教師やベビーシッターなど個人向けの募集は「104打工探吉」という別のプラットフォームが用意されているそうです)。ですので、日本の企業や個人が台湾でスタッフを募集したい場合は、台湾側の法人を通す形になります。
今回自分が使ってみて感じたのは、短期の広告出稿プランが以前より減っており、以前ほど気軽に短期スタッフ募集で使える媒体ではなくなっていたという点です。加えて、審査段階で投保證明(社会保険加入の証明)の提出を求められる方向に変わってきているようで、規模の小さい会社や個人事業主が代理で募集をかける、というのがかなり難しくなってきていると感じました。
求人プラットフォーム側の細かい実務については、次回の記事でもう少し掘り下げてまとめる予定ですが、「昔の台湾なら」「短期プランで気軽に募集できた」というイメージは、今の運用と大きく違ってきていると思っておいた方が良さそうです。
LINE以外の経路——SNS・掲示板・求人プラットフォーム
LINEグループを主流としつつも、他にも人が動いている経路はあります。
- SNS(Threads・IG・FB個人アカウント):クライアントや現地担当者が日常的に発信しているアカウントから、募集を投げる形。上の現場②のように、想像以上に機能する場面があります。
- 掲示板系:臨時スタッフ・短期アルバイト・個人からの依頼などは、台湾版の2ちゃんねると呼ばれるPTTのような大手掲示板や、日台交流系の掲示板で募集されているケースもまだあります。ただ、PTTは最近の若い世代はあまり使わなくなってきているらしく、体感としては30代前後から上の世代が中心の媒体になっているようです。日台交流系の掲示板は、現地の台湾人を探すのには向かないかもしれませんが、台湾に住む日本人層を探すには使える経路です。
- 求人プラットフォーム(104など):中長期の正社員募集がメインの設計になっている印象で、外国人・個人事業主・短期案件との相性は、あまり良くないというのが今回の印象です。
属性ごとに、選ぶ媒体は変わる
改めて整理すると、いくつかの傾向が見えてきます。
- 通訳者・イベントスタッフ:LINEグループが主流。ただし規模と反応数が比例するとは限らない
- 一般の短期アルバイト:SNS(特に個人発信)や掲示板系が意外と機能する
- 中長期の正社員・専門職:104のような求人プラットフォームが有効
- 飲食業などの現場スタッフ:賃金だけでなく、時間の自由度など条件面の見直しが必要な時代に
もしいま台湾で短期スタッフや現地スタッフを集める必要が出てきた場合、自分なら以下の順序で考えると思います。
- 通訳や現場慣れした人材が必要なら、まず知り合い経由で該当ジャンルのLINEグループに投げる
- LINEグループの反応が薄い場合や、より広い層に届けたい場合は、クライアント・現地担当者の個人SNSで発信する
- 短期の一般スタッフや日本人層を探す場合は、掲示板系も選択肢に入れる
- 中長期の正社員募集の場合に、有料の求人プラットフォームを検討する
「台湾なら人はすぐ集まる」というかつてのイメージで動いてしまうと、実際の現場では想像以上に苦戦することが多い、というのが今のところの正直な感想です。属性・目的によって、使うべき媒体は明確に変わってくる、というのが今回の一連の経験から得た実務的な感覚です。
次の記事では、104(人力銀行)を実際に登録・運用しようとした際に見えてきた実務側の話——外国人・個人事業主が突き当たる壁と、最近さらに厳しくなった審査の話について、まとめたいと思います。

