前回の記事で、台湾の人材探しはLINEグループやSNSが主流になりつつあり、有料の求人プラットフォームは中長期の正社員募集向けに寄っている、という話を書きました。
今回はその続きとして、実際に104(人力銀行)を使おうとして自分がぶつかった壁について、もう少し掘り下げてまとめておきたいと思います。台湾で最大手の求人プラットフォームですが、外国企業・個人事業主・短期案件という組み合わせに対しては、想像以上に高いハードルが用意されていました。
前提——104は「統一編号を持つ台湾の企業」向け
まず一番大きな前提として、104は基本的に統一編号(統一企業番号/台湾の法人番号)を持つ台湾の企業(会社・商号)でないと利用できません。外国企業や個人がそのまま登録して使う、という設計にはなっていないようです。
家庭教師・ベビーシッター・引っ越し手伝いなど、個人が個人に依頼するような小規模な仕事については、「104打工探吉」という別のプラットフォームが用意されていて、そちらは個人でも無料で掲載できる、と案内されているようです。ただ、企業として短期スタッフを募集したい、というような用途は、あくまで法人アカウント側の話になります。
したがって、日本の企業や、台湾に法人を持たない個人事業主が104を使いたい場合は、台湾側の法人を挟む必要があります。
ここで一つ気をつけたいのは、たとえば知り合いの台湾法人に募集を出してもらう場合でも、社会保険の加入(投保)などの制度上、実態としては「募集を出した台湾法人がそのスタッフを自社の従業員として雇用する」という前提になる、という点です。名義だけ借りて外国企業側のスタッフとして派遣する、というようなグレーな運用は実務的には難しく、案件の性質やスタッフの労務責任をどう分担するのかを、事前にしっかり整理しておいた方が良いと思います。
登録した瞬間から始まる、営業攻勢
もう一つ、実際に登録してみて意外だったのが、登録直後からの営業の激しさです。
企業アカウントを作った直後から、104のスタッフから電話が頻繁にかかってきます。「どんなスタッフを探しているか」「どのプランがおすすめか」といった内容の確認・提案が中心で、こちらの手が塞がっていて電話に出られない時間帯には、代わりにメールで同様の内容が送られてきます。
大手プラットフォームらしい丁寧な営業体制、と受け取ることもできますが、はじめて登録した企業の担当者からすると、「まだ使い方を見ている段階なのに、追い立てられるように営業が来る」という印象になりがちで、心理的なプレッシャーは意外と大きいです。
変わってきた広告出稿プラン——短期の選択肢が消えた
実際にプラン内容を確認して感じたのは、短期の広告出稿プランが以前と比べて明らかに減っている、という点でした。
10年ほど前だと、1〜2週間程度の短期プランが用意されていて、イベントや展示会のような単発案件のスタッフ募集に、ちょうど良く使えた印象があります。しかし今は、こうした1〜2週間単位の短期プランは見当たらず、30日〜のプランが最短の選択肢になっているようでした。
なぜ短期プランが消えたのか、少し調べてみたところ、大きく3つの背景があるようです。
- 台湾企業の採用サイクルそのものが長期化している。少子化と人手不足の常態化で、104人力銀行の報告によれば、現在の台湾では企業が1人採用するまでに平均44.9〜60.3日を要しているそうです。旧来の14日短期プランでは、選考が終わらないうちに広告掲載期限が切れてしまう、という状況が普通になっており、常規プランも30日/60日/90日に延ばされたと説明されていました
- 104側のビジネス戦略として、単価の低い極短期プランを整理して長期プランを主軸にすることで、顧客単価(ARPU)を安定的に伸ばしていきたい、という商業的な意図もあるようです。実際、30日標準プランの価格も近年、4,200元→4,600元に引き上げられています
- 掲載一時停止機能(暫停天數)による運用の弾力化。現在のプランには「掲載一時停止機能」が内蔵されていて、募集開始から数日で採用が決まった場合には掲載を一時停止し、残り日数を次の欠員募集に持ち越すことができる仕組みになっています。この弾性運用が、過去の「短期プラン直接購入」の需要を一定程度、内側から吸収している、と紹介されていました
つまり、「短期プランがなくなった」というより、「長期プランに弾性運用機能を組み込んで、企業側の使い勝手をカバーする形に切り替わった」と理解する方が正確なのだと思います。
参考までに、今回実際に営業担当者から提案された4つのプランは、以下のような内容でした(いずれも新規顧客向けの割引価格つき)。
- プランA:30日掲載 + 露出強化14回 + 自動順位更新20回(3日ごとに自動更新・閲覧2倍) + 104TOPページ「急募求人」特集2週間の付与(価値8,000元) / 原価14,560元 → 優待価12,910元
- プランB:30日掲載 + 露出強化7回 + 104TOPページ「急募求人」特集1週間の付与(価値4,000元) / 原価9,640元 → 優待価7,990元
- プランC:30日掲載 + 自動順位更新20回 / 原価5,600元 → 優待価4,680元
- プランD:30日掲載のみ / 原価4,600元 → 優待価4,140元
なお「露出強化」は、トップページTOP10への固定表示・限定枠での推薦掲載・アプリのTOPページ掲載、といった機能から選ぶ形式になっているようです。
いずれも「30日掲載」が最小単位で、単発イベント向けの1〜2週プランは選択肢そのものが存在していません。台湾側の企業からすれば、そもそも正社員募集がメインの用途なので、30日〜でも問題は少ないのだと思います。ただ、こちらのように「展示会当日の通訳・案内スタッフを2〜3日だけ集めたい」というような用途では、割に合わないコスト構造になってしまいます。
2026年9月からの、審査厳格化——社会保険加入証明の提出義務
もう一つ、これは今回の登録手続きの途中で受け取った通知で知ったのですが、2026年9月23日から、104の企業アカウント審査が厳しくなる旨の案内が届いていました。
具体的には、これまで求められていた会社関連の資料に加えて、社会保険加入証明(投保証明)の提出が必須になる、という内容でした。
これは雇う側から見ると、地味に重い変更です。台湾の社会保険は、労働者保険(労保)・国民健康保険(健保)・労働者退職金(退休金)などが基本ですが、加入義務の対象は「雇用している従業員」なので、代表1人だけの小規模な会社や個人事業主は、そもそも保険に加入させる対象となる従業員がいない、というケースが多くあります。
自分の場合もこのパターンで、少なくとも即座には社会保険加入証明を用意できない状態でした。
もっとも、この点は事情を説明すれば個別に免除される余地があるのかもしれませんし、事実関係はもう少し確認が必要かなと感じています。実は、この審査厳格化の案内は、上に挙げたプラン提案の営業と抱き合わせで送られてきていました。時系列で並べると、次のような流れです。
- プランA〜Dの提案メールが届く(それぞれ割引価格つき)
- 翌日、「9/18までに申し込めば、104TOPページ「最新求人」特集の1週間掲載(価値5,000元)を追加でプレゼント」というリマインド
- さらにその後、「9/23から審査規定が改定され、これまでの会社設立証明(立案証明)に加えて社会保険加入証明(投保証明)が必要になります。案が固まっているならお早めにお申し込みください」という案内
- 翌日、「9/24までに申し込めば、同じく「最新求人」特集1週間プレゼント」というリマインド(内容は前回と同じ、日付だけ差し替え)
こちらから明確に断りを入れるまでは、こういった連絡が延々と続く印象でした。
もちろん、9月23日からの審査厳格化そのものは、104側の実務ルールとして事実だとは思います。ただ、それが「新規申込を早めに促すためのフック」として営業の文脈に組み込まれていた、ということも同じくらい事実で、案内の重みをそのまま受け取っていいのか、実運用レベルの縛りがどれくらいかかるのかは、もう少し時間を置いて見る必要がありそうです。
いずれにせよ、外国企業や小規模事業者にとって、104を使う際の書類のハードルが上がる方向に動いているのは確かで、事前に必要書類を確認しておく必要はあると感じました。もっとも、前述したように、そもそも「代理で誰かのスタッフを募集してもらう」という運用自体が実務的にはかなり難しい構造になっていますので、104を使うのであれば台湾側の法人が正面から自社スタッフを雇う、という前提で進めた方が現実的だと思います。
小雞上工——単発・短時間のマッチングアプリ
104ほど大きな話ではないので、あくまで参考程度の触れ方になりますが、最近の台湾では小雞上工というギグワーク系のプラットフォームも一定の存在感を持ってきているようです。
調べてみたところ、数字科技という企業が2018年から運営しているアプリで、累計540万ダウンロード、掲載求人は5万件を超える、台湾では最大級の短期・パート向けプラットフォームだそうです。特徴はリアルタイム通知の仕組み(現地では「即時溝通制」と呼ばれています)で、募集を出すとすぐにスマホへプッシュ通知が飛び、応募が即入るという設計です。イベント現場のヘルプ、飲食、補習塾の臨時スタッフなど、1〜4時間の単発・短時間の仕事が中心に扱われているようで、日本でいうタイミーのような位置づけのアプリと理解すると分かりやすいのかなと思います。
自分もアプリを入れて、法人側として登録を試してみたのですが、外国人が個人アカウントで使うのはかなり厳しい設計でした。台湾人の身分証番号を前提とした登録フローになっており、外国人の居留証番号だと桁数が合わずに弾かれます。おそらく法人アカウントでの利用が前提のプラットフォームなのだと思います。
自分自身は、法人アカウントを作って情報を入力したところで止まっていて、実際に募集広告を出すところまでは進んでいません。ですのでここでは、「最近こういうプラットフォームが伸びていて、短期・単発のマッチングという需要が明確に存在している」という紹介に留めておきます。
まとめ——今の台湾で求人プラットフォームを使う際の現実
改めて整理すると、104を含む台湾の求人プラットフォームは、次のような設計思想で動いているように見えます。
- 統一編号を持つ台湾の会社・商号が前提:外国企業や台湾法人を持たない個人事業主は、基本的にそのまま使えない
- 中長期の正社員募集向け:短期プランは縮小傾向、単発イベントには相性が悪い
- 審査は厳格化の方向:会社資料に加えて、社会保険加入証明のような労務側の書類も必要になってきている
- 登録直後の営業攻勢が想像以上に強い:大手ゆえの体制と割り切る必要がある
日本の企業が台湾でスタッフを探したい場合、104を直接使うというよりは、台湾側にパートナーとなる法人があって、そこが正面から自社スタッフとして雇うという形か、あるいは前回の記事で触れたようなLINEグループ・SNS・掲示板の複数チャネルを組み合わせる、という形が現実的な選択肢になってきていると思います。
次の記事では、こうしたプラットフォーム側の話から一歩踏み込んで、台湾で人を雇う際に押さえておきたい労働基準法と社会保険の全体像——雇う側の負担がどれくらいあるのか、という部分について整理したいと思います。

