日本の販路パターンをそのまま持ち込むと詰む——台湾で”売れる販路”を業種別に組み替える視点

台湾ビジネスのヒント

台湾進出を考える日本企業から相談を受けていて、繰り返し出てくる悩みがあります。

「日本で売れている販路のやり方をそのまま台湾でやったのに、うまくいかない」——これは日本と台湾でビジネス環境の違いを甘く見た結果、というより、そもそも業種によって”売れる販路”が根本的に違う構造があるからです。

日本ではBtoCが主流の商品が、台湾ではBtoBに切り替える必要があったり、その逆もあったり。あるいはBtoB/BtoC以前に、輸入経路や現地文化の壁で入り込めなかったり。

今日は、実際に見てきた4つのパターンを通じて、台湾での販路組み替えの視点を整理してみます。

パターン①:日本ではB2C、台湾ではB2Bに切り替える——家具の例

日本のある家具メーカーが、台湾で自社の家具を売っていきたい、と考えて動き始めた時のことです。

日本での販路は、消費者向け(BtoC)が中心。展示販売会や小売店経由で個人客に売っていました。同じ手法で台湾でも売れるだろう、と考えて、一般の人が来場する展示会を自主開催したのが最初のスタートでした。

ところが、思ったように動きません。そこで台湾のデザイン事務所や業界関係者を回って話を聞くと、共通して同じアドバイスが返ってきました。

  • 台湾で家具を一般人向け(BtoC)に売っても、購入層は限られる
  • むしろデザイナーや建築会社(BtoB)の販路を開拓した方が売れる

理由は、台湾の家具購買構造にあります。多くの場合、施主が家を建てる/リフォームする際に、家具はデザイナーがコーディネートして提案する流れが強い。施主は「デザイナーが良いと言うなら」でそのまま採用する。つまり実際の購買決定を動かしているのはデザイナーであって、施主本人ではない。

日本ではB2Cが自然だったのに、台湾ではB2Bに組み替える必要があった——これが1つ目のパターンです。

パターン②:日本ではB2B、台湾ではB2Cを開発する——雑貨の例

逆のパターンもあります。

ある日本の雑貨ブランドは、日本では小売店・雑貨店への卸売(B2B)が中心の販路構造で回っていました。同じやり方で台湾でも卸先を開拓しようと動きましたが、状況が違いました。

  • 台湾では、その商品ジャンルを扱える小売店・雑貨店の数がそもそも少ない
  • B2B販路として頼れる店舗が絶対数で限られている
  • 結果、B2B開拓だけでは市場に届かない

そこで方針転換。日本ではやっていなかったB2Cの直販ルート(自社EC、SNS、ポップアップイベント、直営店)を台湾で開発する方向に切り替えました。日本での商習慣を捨てて、台湾では消費者と直接つながる形を作る。

日本ではB2Bで完結していたのに、台湾ではB2Cも開発しないと売上が立たない——これが2つ目のパターンです。

パターン③:B2C/B2B以前に、輸入経路が壁になる——食材の例

3つ目は、そもそもB2C/B2Bの議論以前で詰まるパターンです。

日本のある食品メーカーが台湾で商品を売りたいと考え、スーパーで開催される日本フェアや、台北・高雄の食品見本市に出展しました。一般消費者にまず試食してもらい、反応を見る——という順当なアプローチです。

反応は良かった。店舗側も「これは売りたい」と言ってくれる。ところが、そこから話が進みません。

  • 店舗自身が食品を輸入する実務を持っていない
  • 台湾への食品輸入は、輸入規制・検疫・登録など手続きが非常に重い
  • 食品貿易会社・輸入商社を間に挟まないと、そもそも販売の入口に立てない

つまり、消費者テストと店舗の反応が良くても、輸入経路が確保できていないと販路にならない。日本国内なら「良い反応→販売開始」で回るところが、台湾ではその間に”輸入商社を見つけて契約する”というステップが必ず入る

食材の場合、販路開発の前に「輸入をどう成立させるか」の設計が要る——これが3つ目のパターンです。

パターン④:現地の商習慣文化に入り込めない領域がある——住宅リフォームの例

4つ目は、日本の販路構造そのものが、台湾では成立しないパターンです。

日本のある住宅リフォーム会社は、日本国内では一般住宅向けをメインに、水回り修理から大規模改装まで幅広く展開していました。台湾でも同様に展開しよう、と考えて動きましたが、市場構造がまったく違っていました。

  • 台湾には全土で1万数千社ものデザイン事務所・施工会社が存在。狭い国土の中で激しい顧客の奪い合いになっている
  • 部分的なリフォームや水回り修理は、地域の「水電行(水道・電気の修理店)」に直接依頼する文化が定着している
  • リフォーム会社が「小口の修理も承ります」と入っても、水電行に直接頼む文化の中で入り込む余地が薄い
  • 低所得層向けの安価リフォーム市場は、ローカル企業が価格・スピードで圧倒的に強い

このパターンでは、日本流の「幅広く受ける」戦略のままでは勝負にならない。ターゲット層を大きく絞り込む——具体的にはハイエンド層向けリフォームに特化する、という方針転換が必要だと現地から言われました。

日本での主戦場(一般住宅・幅広い層)が、台湾では最も戦えない領域——これが4つ目のパターンです。

4パターンから見える、共通の教訓

4つの業種を並べると、共通する構造が見えてきます。

  • 日本と台湾では、”売れる販路”が根本的に違うことがある
  • 日本での販路パターンをそのまま持ち込むと、次のいずれかで詰まる:
  • 販路の主軸が逆(家具B2C→B2B/雑貨B2B→B2C)
  • 販路以前の実務経路が壁(食材の輸入)
  • ターゲット層を絞らないと戦えない(住宅リフォームのハイエンド化)

これは「台湾で売れる日本の商品・売れない日本の商品」で扱った”消費者ニーズの違い”とは別の論点で、販路構造そのものの違いの話です。良い商品でも、販路の組み方を間違えると届きません。

じゃあどうするか——販路を組み替える視点

進出前・進出直後に必ずやるべきことは、次の3つです。

① 日本での販路構造を、いったん忘れる

「日本でこう売っているから、台湾でも同じ」の発想を先に外す。自社の商品が、台湾市場ではどの層が実際に購買決定するのかを、日本のパターンを持ち込まずに見直す。

② 現地の業界人に「販路構造」を必ず聞く

現地のデザイナー・小売店主・輸入商社・業界公会などに、「この商品を売るなら、台湾ではどんな販路が現実的か」を直接聞く。エンドユーザー調査より先に、販路構造の実態調査が要る。

③ 販路の主軸を組み替える覚悟を持つ

日本と同じ販路で通用しないと分かったら、思い切って主軸を組み替える。B2C→B2B、B2B→B2C、直販→商社経由、幅広い層→ハイエンド絞り——日本での成功パターンを捨てる選択が要ることがある。

まとめ

台湾での販路設計は、日本流と現地化の判断の中でも特に重要な領域です。商品そのものは日本流を残せても、販路構造は現地に合わせて組み替える——この視点がないと、良い商品を持っていても届かない構造がある。

  • 家具のような業種:日本B2C → 台湾B2B(デザイナー経由)
  • 雑貨のような業種:日本B2B → 台湾B2C(直販開発)
  • 食材のような業種:B2C/B2B以前に輸入経路が要る
  • 住宅リフォームのような業種:ターゲット層を上位に絞る

「日本ではこう売っているから、台湾でも同じ」の思い込みを外して、販路構造をゼロベースで見直す視点が、進出成功の土台になります。

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