こんにちは、
前回の記事では、台湾でマイクロ法人を運営している理由とそのメリットについてお話しました👇
👉 台湾起業で人を雇うのが不安?一人会社でも回る仕組み、あります
今回はその続編として、「実はちょっと困ったこともあるよ」という話をしていきます。
テーマはズバリ、保険と退職金です。
社員ゼロだと保険がかけられない!?制度の壁にぶつかる

台湾では、誰かを「社員」として雇った場合、
- 勞保(労働保険)
- 健保(健康保険)
- 退休金(退職金)
この3つの社会保障制度への加入が義務になります。
企業側は「投保單位(保険加入事業者)」として登録し、社員の社会保険料の一部を負担します。
ところが、ここで問題が。
社員がいない会社=投保單位になれない
つまり、社員がいない会社では、代表者自身に労働保険や退職金がかけられないんです。
健康保険だけは入れる。でも…
「え、それって健康保険も入れないの?」と思った方、ご安心ください。
健康保険(健保)だけは、たとえ社員ゼロでも代表者には加入義務があります。
ただし、「自行舉證(自己申告)」での加入となり、通常の雇用とは違う扱いです。
労働保険と同様に投保單位にはなれませんので、自行舉證(自ら保険の加入資格や必要性を証明する)という方法で加入をします。
しかもここでまたハードルが。
代表者の場合、保険等級は最低でも40,100元(2025年時点)での加入が必須
つまり、
- 給与ゼロでも保険料はかかる
福利厚生の費用を抑えようとしても、最低ラインは避けられない
というのが現実です。
労保・退職金を使いたい場合の3つの選択肢

「いやいや、それでも労災補償とか退職金制度は使いたい!」という方もいると思います。
その場合は以下のいずれかの対応が必要です:
① 社員を雇用して投保單位になる
社員が1人でもいれば投保單位の登録ができ、代表者も制度に加入可能です。
② 他社に「社員」として雇ってもらう
別の法人に自分を雇ってもらい、その企業の保険枠でカバーしてもらう方法。
ただし給与支払や税務面で注意が必要です。
③ 職業公會に加入する
自営業者やフリーランス向けの団体「職業公會」を通じて労保に加入できます。
ただし保険料の個人負担が60%と高め(政府40%、会社負担はなし)なのでコストは上がります。
ちなみに会社で加入する場合は会社70%、個人20%、政府10%の割合となり、会社負担分は経費として計上できます。
社員を雇うときの注意点:代表者は“低等級”にできない

「じゃあ、社員1人くらい雇っておくか」と考えた方に1つ注意があります。
代表者は、社員よりも低い保険等級での加入はできません。
たとえば、社員の給与が5万元で代表者が3万元の場合、
代表者の保険等級も5万元に引き上げられるのが基本ルールです。
そのぶん、保険料の会社負担も増えるので要注意。
私の場合はどうしてる?
私はというと…
最初から保険や退職金には頼らない前提で動いています。
老後のことやリスク対策は、自分で設計していくスタンス。
なので、「余計な固定費がないぶん、むしろラッキー」とすら思っている節があります(笑)
もちろんこれは価値観の問題。
社会保障を重視する方にとっては、社員雇用や別の制度活用もアリです。
マイクロ法人=万能ではない。でも“戦略的に選べばアリ”

マイクロ法人はフットワーク軽く動けて、意思決定も早く、コストも抑えられる。
でもその一方で、
- 社会保険に制限がある
- 公的制度の恩恵は受けにくい
という現実もあります。
ただ、それを「知ったうえで選べる」ことが大事だと思うんです。
まとめ:制度の“穴”も知ったうえで、最適なスタイルを選ぼう
台湾で一人会社を始めると、保険制度の壁にぶつかる場面もあります。
でも、回避策や代替手段を知っていれば、無理なく進めることはできます。
重要なのは、自分のリスク許容度やビジネスのフェーズに合わせて選択肢を持っておくこと。
台湾で起業や法人運営を考えている方にとって、この記事が判断材料のひとつになれば嬉しいです。

