こんにちは、
台湾ではさまざまな企業に訪問する機会がありますが、老舗企業=信頼できるとは限らないというのが最近強く感じることの一つです。
訪問して感じた「この会社、先がないかも…」という直感

老舗企業に訪問すると、立派な社屋に年季の入った応接室、壁には創業◯十年の看板。
一見すると歴史と実績のある頼もしい会社に思えるのですが、内部の雰囲気に触れると「この会社、ちょっと危ないかも」と感じることがあります。
その原因の多くは、一族経営による事業継承の硬直化にあると見ています。
会長(=初代社長)が絶対的存在。変化は許されない空気

台湾の老舗企業では、初代の創業者が今も会長として強い影響力を持っているケースが多くあります。
現社長は二代目・三代目であっても、意思決定の多くを会長に仰がなければならない。
その結果、「現場の危機感」と「トップの判断」がズレていくことが少なくありません。
特に問題なのが、海外展開のような“変化”に対する抵抗感です。
台湾経済の停滞と、経営陣の“過去の成功体験”

台湾の内需は縮小傾向にあり、企業の生き残りには海外市場への展開が不可欠になりつつあります。
しかし、古くから台湾市場だけでやってきた創業世代は「これまで通りで大丈夫」という意識が強く、
海外展開に必要な予算がつかなかったり、担当部署の裁量が制限されたりすることも。
結果として、優秀な若手社員がやる気を失ったり、
「親の意見に従うだけの2代目」がリーダーシップを発揮できずに企業全体が停滞してしまうのです。
老舗企業の実態を見極めるには?

もちろん、老舗企業には長年の人脈や信頼があるというメリットもあります。
ただし、それが現在も機能しているかどうかは別問題。
たとえば、創業者の“顔”が効いていたとしても、その人が引退した後に社内に何が残るか。
若手が育っていなければ、会社の未来は極めて不安定です。
実例:創業60年超の企業で起きていた“内部崩壊”

とある企業は創業から60年以上が経過しており、すでに何度か代替わりはしていました。
とはいえ、実権を握っているのは今も創業者一族。経営陣もほとんどが親族関係者で固められていました。
一族の中には時代に取り残されつつある考え方を持つ人も多く、現場の危機感との温度差は明らか。
売上は年々下降し、部下たちがいくら報告・改善提案を出しても、最終的には「昔はこうだった」「それはお前たちの努力不足だ」と一蹴されてしまう。
現場としては、本当の原因が主力商品の国際的な需要減少であることをわかっていても、それを直言すれば“過去の成功”を否定することになる。
結果、「トランプ関税」や「景気の波」といった表面的な理由を挙げて、いかに短く議論を済ませるかを考えるようになってしまったそうです。
これはまさに、老舗であることが変化を阻害している象徴的なケースだと感じました。
まとめ:老舗企業こそ、冷静な目で見極めを
老舗という言葉に安心感を覚えるのは当然です。
でも、台湾においては老舗ゆえの硬直性や、代替わりの失敗によって衰退が始まっている企業も少なくありません。
一見すると安定して見える相手でも、「変化に対応できるか」「意思決定のスピードがあるか」という視点で見極めることが大切だと感じています。

