台湾ビジネスの時間軸——3年目・5年目・10年目に見えてくるもの

台湾ビジネスのヒント

「台湾でビジネスを始めれば、1〜2年でそこそこの結果が出るはず」——このイメージで進出する日本企業を見てきましたが、実際にはそう単純ではありません。

台湾ビジネスの成果を、日本の時間感覚で判断すると詰まります。10年見てきた実感として、3年目、5年目、10年目でそれぞれ見えてくる景色が違います。今回はその時間軸を整理します。

3年目に見えている景色——3つのパターン

台湾に進出して3年経った時点で、多くの企業は次の3つのパターンのどこかにいます。

パターンA:代表者が出張ベースのみ

現地社員を雇わず、代表者が日本から出張で対応する形。これはほぼ進まないパターンです。3年間、コストだけを支払っている状態が続きます。コストを最小限に抑えていれば微々たるものですが、売上につながる結果はほとんど出ていない、というケースがほとんどです。

パターンB:現地社員に任せている

現地社員を雇って任せている場合。業界によって差はありますが、まだ赤字という印象が強いです。回っている感はあるものの、収支としては投資段階が続いている状態です。

パターンC:駐在員を置いている

駐在員を置いて展開している会社は、それなりに売上が上がってきて、人脈も増え、軌道に乗り出している印象があります。ここから先は、「どうやって売上規模を大きくしていくか」という新たなテーマが出てくる段階です。

3年目のつまずきを越えるポイント

3年目でつまずいている企業に共通するのは、「どうやって収益を上げるか」「どうやって顧客を獲得するか」の設計が甘いという点です。

日本の営業スタイルだと、泥臭く足で稼ぐ(訪問して提案する)アプローチが多い印象ですが、台湾では必ずしもそれがうまくいくとは限りません。分野によっては、オンラインマーケティングに力を入れた方が結果が出るケースもあります。

「日本流の営業でどうにかなる」という前提のまま3年経つと、収益化のシナリオが見えなくなります。現地の市場に合った顧客獲得の設計を、3年目のタイミングで見直すのが実務的です。

5年目・10年目に見えてくるもの

5年目に入っても赤字の状態が続いていれば、それは大きな方向転換を迫られる時期です。「あと少し粘れば」という気持ちで続けるだけでは、状況は変わりません。

私のクライアントの中には、10年ほど続けてやっと黒字化した会社もあります。共通しているのは、当初予定していた業態から少しずつピボットしていった、という点です。最初の想定通りにはいかず、市場と自社の現実の中で、業態やターゲットを調整していった結果、黒字化に到達しました。

そこに至るまで大事なのが、なるべくコストを抑えておくことです。コストを絞っておくと、方向転換への対応力が残ります。逆に、大きくコストをかけた状態で赤字が続くと、ピボットする余力がなくなります。「変化に耐えられる財務体力」を維持することが、長期戦の前提になります。

「すぐ結果」を期待しない発想

すぐに結果が出ると思っていたら、当然うまくいきません。台湾ビジネスは、5年・10年のスパンでプラスに転じるような構造を作っていくという発想の切り替えが要ります。

短期で結果を判断してしまうと、まだ育っていない案件や、ピボット直前の状態を「失敗」と結論付けて撤退してしまいます。逆に、長期目線で構造を作りにいくと、5年目や10年目でようやく実を結ぶケースがあります。

結果を左右する3つの要因

長期戦を戦う上で、結果を左右する要因は、大きく3つあると感じています。

1. 社内に重要なポジションを担える人間が育ち、長く定着してくれるか

現地スタッフの育成と定着は、時間軸が長い戦いの中で最も重要な要素です。「辞める前提」の設計は必要ですが、その中でも育つ人・残る人を作れるかどうかが差になります。

2. パートナー企業や顧客の中で、キーとなる存在が見つかるか

「この相手」というキーとなるパートナー・顧客が見つかると、事業は一気に前に進みます。逆に、キーとなる存在がいないまま数を追いかけると、時間だけが過ぎます。

3. 業界のルールやトレンドの変化に合わせていけるか

台湾市場の変化は速く、業界ルールもトレンドも動きます。当初の想定に固執せず、変化に合わせていく感度が、5年目・10年目で効いてきます。

まとめ——「時間軸を長く取る」構造設計

台湾ビジネスは、日本の時間感覚で判断すると詰まります。

  • 3年目:多くの会社はまだ「軌道に乗り始め」の段階。判断は早すぎる
  • 5年目:赤字が続くなら方向転換の時期。ピボットを恐れない
  • 10年目:ここでようやく黒字化するケースもある

短期で結果を判断せず、5年・10年でプラス転換する構造を作る——この発想があるかどうかで、長期戦の結果が変わってきます。

コストを絞って変化に耐える体力を残す、内部人材を育てる、キーとなる相手を見つける、変化に合わせて動く——時間を味方につけながら、これらを積み上げていく。台湾ビジネスの時間軸は、日本より一段長い、というのが10年見てきた実感です。

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